2024年から日本に上陸した蒸留所を横断したラインナップのブランドArte NOMについてご紹介します。
Arte NOM Seleccionが生まれた背景
Arte NOM Seleccionというブランドは、大変特殊なブランドになります。通常のブランドは単一蒸留所で製造され、販売されます。一方、Arte NOMは一つのブランドから4つの蒸留所で作られた銘柄を販売しております。そんな珍しいブランドを作った背景をご紹介してまいります。
ブランドオーナーのJacob Lustig氏
Arte NOMのブランドオーナーはJacob Lustigという方になります。彼が目指すところは、単にテキーラから利益を得ることだけでなく、真に優れたテキーラを、その背後にある職人技、伝統と共に紹介することです。
Lustig氏のアガベスピリッツとの関わりは、1990年代にオアハカで始まりました。彼はオアハカで、当時まだ知られていなかったメスカルの世界に魅了され、アメリカの観光客をPalenques(伝統的なメスカル蒸留所のこと)に案内することで、その魅力を広める活動をしていました。その後、メスカルをアメリカに輸入する会社の代表を務め、生産から物流まで、様々な工程に深く関わってきました。
また彼はいくつかのテキーラブランドをアメリカに輸入し、市場開拓に成功した後、Lustig氏は新たな挑戦を模索し始めます。
2000年代初頭、アメリカのテキーラ市場ではショットで飲むだけの酒から、ゆっくりと味わう高級酒へと変化を遂げていました。特にアネホが流行っている中で、彼は多様なテキーラの魅力を最大限に引き出すためには、それぞれの蒸留所の個性を尊重することが重要だと考えました。
ArteNOMの由来
そして2008年、LustigはArteNOMというブランドを作り上げます。Arte NOM Seleccionは、「それぞれのNOM(メキシコ規格公認番号)で、異なる蒸留所で特定のテキーラを作る芸術」を体現するブランドです。彼は最高の蒸留所と提携し、それぞれの作り手の技、アガベを反映した個性豊かなテキーラを世に送り出しています。
Arte NOM Seleccionの銘柄
Arte NOM Seleccion 1414
蒸留所:Feliciano Vivanco y Asociados(ビバンコ蒸留所)
日本では現在同蒸留所のブランドはArteNOM以外は未輸入です。もともとは1929年からロス・アルトス地方(アランダス)のアガベ農家であった一族が、1994年にテキーラ蒸留所を設立したテキーラづくりに長く携わっている蒸留所となります。
また、様々なマキラブランド(OEM/ブランドオーナーが蒸留所ではないもの)を作っていることでも有名です。TMMで調べると40ブランド以上が現在もアクティブということになっている多作の蒸留所です。多作ながら、その作ったブランドの多くが大変高い評価を得ております。
蒸留所のメインブランドのViva Mexicoは酵母をシャンパーニュ酵母を使用しているようですが、ArteNOMについては柑橘の花粉から採取した酵母を使用しています。
Arte NOM Seleccion 1146
蒸留所:La Tequileña distillery(日本語読み:テキレーニャor テキレニャ)
日本ではDon Fulanoというブランドでテキーラ好きからは人気の蒸留所。詳細は以下のブランド紹介ページを御覧いただきたいが、もともとアガベ農家の一族が”蒸留はウィスキーから学び”、”発酵はワインから学んだ”という、大変こだわりのある蒸留所です。
ロワール渓谷でカベルネフランを造ったワイン樽で最低14ヵ月熟成、その後カナディアンウイスキー樽(又はテネシーライウイスキー樽)で最低14ヵ月熟成。異なる由来を持つ複数の樽でアニェホの最低熟成年数である1年を遥かに越えた長期熟成を施すことで、複雑かつ濃厚で豊かな樽感が感じられるテキーラになっています。もちろん添加物はいっさい使用していません。
Arte NOM Seleccion1579
日本ではG4の蒸留所として大変人気な無添加銘柄を作るEl Pandillo蒸留所が作るのがArte NOM Seleccion1579。マッドサイエンティストとしても知られるFelipe Camarena氏が作っています。テキーラ蒸留所としては珍しく、使用する水が井戸水・湧き水・雨水の三種類を使用しています。
通常のG4は雨水・湧水を使用しますが、Arte NOM Seleccion1579では雨水・井戸水をすべて使っています。またエアレーションと呼ばれる空気をテキーラに送り込む機械を使用して、まろやかにしているそうです。
Arte NOM Seleccion1123(日本未発売)
日本人テキレロである景田さんが働くCascahuin蒸留所が作る1123。今回、残念ながら諸般の事情で日本輸入が叶いませんでした。
「樽で」テキーラを輸送していた歴史にインスパイアされ、蒸留後の安定化プロセスに、28〜35日間テキーラを樽に入れるという特別な工程を加えました。メスカルの熟成で使われた樽にブランコテキーラを入れて28〜35日間の安定化プロセスを開始します。そして、カスカウィン特有の、バジェス地方のテキーラのプロファイルに、樽熟成によってメスカルの香りが加わった、ほのかな黄金色のテキーラが生まれます。
この大変珍しい作り方をしたテキーラがいつか日本に入ってくることが楽しみです。
味の特徴
Arte NOM Seleccion 1414
香り:加熱したアガベ、スズランとか白い小ぶりな花、バター、洋梨
味わい:粘度のある少しある甘さ、少しスパイシ
アフターノート:バター、アガベ、花、オーク感
飲み方:◎ストレート◯ロック・ソーダ割り
おススメ度合い:☆☆☆☆
香りの項目で書いた通りスズランや洋梨といった甘いニュアンスが心地よく、なんとなく透明感を感じる香りで個人的に好きなレポサドだった。正直、ビバンコ蒸留所のメインブランドであるVIVA MEXICOが個人的にはそこまで好みではないので、あまり期待していなかったのですが、大変素晴らしいテキーラだと感じました。
Arte NOM Seleccion 1146
香り:加熱されたアガベ、クローブとかカルダモンとかの甘い香辛料、バニラ感、上質なはちみつ、木の渋み
味わい:心地よい甘さと樽由来の苦み
アフターノート:甘いアガベにオーク、最後にハニーと香辛料
飲み方:◎ストレート◯ロック、△ソーダ割り
おススメ度合い:☆☆☆☆+
使用している樽は通常のDonFulanoとは異なるがベースのお酒の質の良さは当然共通しており、大変オススメの一本。通常のDonFulanoよりもバランスの良さを感じる。ArteNOM全般にオリジナルよりもバランスの良さを感じるのは私だけではないはずだ。
またインポーターが違うこともあるが、正直通常のDonFulanoのアネホよりも安いのはArteNOMのインポーターの頑張りだろう。ぜひアネホ好きは試してみほしい。一般的なアメリカンホワイトオークだけのテキーラよりも香辛料を感じる大変素晴らしいテキーラである。これを飲まずしてアネホ好きを語らないでほしいと思える一本(個人的には樽はアメリカンホワイトオークよりもフレンチオークが好きということもあるが)
Arte NOM Seleccion1579
香り:しっかりと焼いたアガベ、ハーブ、土っぽさ、オレンジ系の柑橘、ミネラル
味わい:甘さがしっかりとあり、多少スパイシー
アフターノート:焼いたアガベが強く、多少ハーブ感
飲み方:◎ストレート・ソーダ、◯ロック
おススメ度合い:☆☆☆☆
G4を作っているEl Pandilloだけあり、当然ながら大変美味しい。レビューのために最近のロットと飲み比べてみた。G4とは違う良さを感じる。香りを取るとスパイシーG4のほうがスパイシーさが強く、ArteNOMのほうがアガベの甘さを感じる。一方飲んでみると甘さはG4のほうが強く感じて、ArteNOMのほうがバランス良い感じを感じる。当然ながら大変おすすめです。
Arte NOM Seleccion1123(日本未発売)
日本に輸入されたらレビューしてまいります。
香り:
味わい:
アフターノート:
飲み方:
おススメ度合い:
編集後記
買いたい場合は、、、
いかがでしたでしょうか。
飲みたくなってみたという方は、ぜひインポーター直営のテキーラムーチョからご購入して見ください。
テキーラをもっと知りたくなかった方用リンク集
テキーラ自体をもっと知って、楽しく飲みたいという方は、以下リンクをご参考にしてください。。
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著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
Twitterはおすすめ銘柄などを発信
筆者のインスタでは蒸留所の美しい風景などをアップしています。ぜひフォローしてください!
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