当ブログは成人を対象としており、20歳未満の方は閲覧をやめてください。

テキーラの原料、アガベとはどんなもの?栽培の過程、加工も紹介。

agave_アガヴェ テキーラ基礎知識

本サイトはテキーラの魅力を発信するため、未成年者の閲覧を禁止いたします。

テキーラの原料は、サボテンと勘違いされることが多くありますが、アガベという全く別の植物です。そこで、今回はテキーラの原料になるアガベについて、しっかりとご説明してまいります。

テキーラの条件でアガベは重要!

以前の記事でもお伝えしましたが、テキーラと名乗るためには、いくつかの条件があります。
その中でも特に重要なのが、糖分(主原料)としてアガベという植物の中でも、アガベ・アスル(ブルー・アガベ)という品種を51%以上使用することです。
そのアガベの生産地も限定されており、ハリスコ州の全域、他4州(グアナファート州、タマウリパス州、ナヤリ州、ミチョアカン州)の一部エリアです。
また本ブログで主に扱うプレミアムテキーラと呼ばれるものは、基本的にアガベ・アスルを100%使う必要があります。
 ※プレミアムテキーラは通称のため、一部100%ではないものもあります

テキーラの原料のアガベとはどういった植物か?

Tapatioのアガベ畑

アガベとはメキシコを中心に生息する多肉植物※となります。
またアガベはブルーアガベ以外にも複数品種があり、分類方法にもよりますが、100種類以上あります。
その中でもテキーラの主原料として、使えるのはアガベ・アスル(英:blue agave 西:agave azul)のみです。
生物学上はアガベ・テキラナ・ウェベル・バリエダ・アスル(Agave Tequilana Weber Variedad Azul)ですが、長いのでアガベ・アスルと記載します。
ちなみにメスカルはブルーアガベ以外にも使用することができます。(メスカルについてはこちら)

またテキーラでは、アガベ・アスル以外のアガベを混ぜることはできません。
ブルーアガベ51%使用した場合、残りの49%はモラセス(糖蜜と呼ばれる砂糖作った際の副産物)などの糖分を使用し、他のアガベは一切使用してはなりません。

※ 多肉植物(たにくしょくぶつ)は葉、茎または根の内部の柔組織(じゅうそしき)に水を貯蔵している植物の総称である。(Wikipediaより)
同じ多肉植物でいうと、アロエやサボテンが日本ではメジャーです。
テキーラの原料を、サボテン、アロエと誤解されることもありますが、生物学的にはアロエが若干近縁、サボテンはだいぶ縁遠い植物です。

アガベがテキーラの原料として収穫するまでの生育方法

アガベは植物の中でも比較的手のかからない植物と言われております。
主にやることは、①子株を植える②除草③キオーテという花になる部分をカット④子株を刈り取る⑤蒸留所によってはバルバロと呼ばれる葉の先端をカットすることです。

子株(イフエロ)を植える

アガベは種からも育てることもできますが、現代においては基本的に株分けで増やします。アガベの農場は子株を一定程度まで生育したものを、自社の農園から分けるか、業者から購入してきます。その子株を1メートル感覚で植えていきます。
蒸留所によっては生育を考えて更に間隔を開けて植えるところもあります。

https://3amigostequila.com/timeline/planting/

除草

除草ですが、アガベの背が低いうちに雑草に囲まれてしまうと日が当たらず生育に良くないため、除草が必要となります。
除草の方法は除草剤を使用するか、牛に草を食べてもらうとのことです。最近までは多くの農場が除草剤を使用していたそうですが、2000年代にハリスコ州で黒カビ病の流行があり、除草剤が原因だったと言われており、徐々に牛や草刈り機などを活用した除草に切り替える農場が増えてきているそうです。
牛はアガベがトゲトゲなので、食べずに雑草のみ食べてくれるそうです。

https://3amigostequila.com/timeline/maintaining/

水やりはしなくて良いのかと思うかもしれませんが、アガベは雨季も乾季も水やりをしなくて生育します。雨季は土の水分が増えるため、アガベが重くなり、乾季は少ない水で育つため、アガベは水分の含有が少なくなるそうです。

子株を刈り取る

子株とはアガベの根っこから派生して、親株の近くに生まれます。この子株を刈り取ります。
その子株を自社で一定程度まで大きくする農場もありますが、多くの農場は子株を一定程度まで大きくしてくれる業者に預けることが多いそうです。

バルバロ

すべての農場で行われているわけではないですが、バルバロ(床屋・バーバーの意味)は葉っぱの先を大きなナイフでカットします。
一定程度まで大きくなったアガベは先端にアガベの葉っぱの先端に糖がたまり、赤くなります。そうすると中心の茎が大きくなりづらくなるため、カットします。
ただ2023年現在、アガベの値段が高騰しており、5−6年程度でアガベが収穫・販売されるため、バルバロはあまりされていないそうです。

キオーテの摘芯

キオーテとはテキーラの花になる部分です。アガベの中心から一本出てきて、とても高くまで育ちます。
キオーテが育つと栄養が持っていかれる上に、花が咲くとブルーアガベが他のアガベと交配してしまう可能性があり、テキーラとして使用できなくなってしまいます。
そのためキオーテが出てきたら、一般的にはカットします。ただ現在はBat Friendly Projectという、アガベの花を餌とするコウモリの保護のために、あえて数%のみ残すプロジェクトもあります。(後述)

この状態にならないように真ん中のキオーテをカット

【Bat Friendly Project】

日本ではブルーアガベはキオーテと呼ばれる花を咲かせる茎が出てきたら茎は全て落とされると言われてきました。前述の通り、キオーテに栄養が行ってしまい、ピニャが美味しくなくなるため、他の品種のアガベと交配しないことを理由とされています。数年前までは事実でしたが、実は一部のアガベ農園では違う行動をしています。
キオーテを開花前にカットすることで、アガベの花から栄養を取っていたコウモリの餌が足りず、特定のコウモリの絶滅に近づいていると言われています。絶滅を防ぐための活動が一部で起こってきています。その活動ではTapatio、G4などの一部の蒸留所のアガベ畑では、あえて花を咲かせるアガベを数%作ることで、コウモリの餌を確保。コウモリが花を食べるときに、アガベの花を交配させて行きます。今までは子株(イフエロ)で増やしてきたアガベを種からも増やしていく。この活動をBAT Friendly Projectといいます。

数本だけキオーテを生やして残されるアガベ
引用:https://www.batfriendly.org/home/より

アガベの原料になる部分

ピニャと呼ばれる部分を使う

アガベは上の写真の通り、四方に葉が広がる構造をしております。
ただこの全ての部分を使うわけではなく、葉の部分をカットして、中心のピニャ(piña)と呼ばれる茎部分を使用します。このピニャという部分を使用して、加熱→圧搾→醸造→蒸留することでテキーラが出来上がっていきます。

カスカウィンに搬入されたピニャ

ピニャは収穫から早ければ当日、遅くとも二、三日で加熱されます。あまり時間が立つと品質が悪くなるそうです。

日本では早朝に収穫してその日中に加熱されるといった説もありますが、実際には2-3日ほどおいても問題なく、アガベの納品状況によって、加熱釜(マンポステリアかアウトクラベ)が満タンにならないから、加熱は翌日に回すと行ったこともあるそうです。

pina

ピニャとはスペイン語で、パイナップルの意味です。見た目がパイナップルのように見えることからこのような呼び名になっています。
日本でも馴染み深いカクテルの”ピニャ”コラーダのピニャもパインという意味で、材料にパインジュースを使用します。

コゴージョ

先程のキオーテと呼ばれる花茎になる部分ですが、これが育つアガベについては、ピニャの中にコゴージョ(Cogollo)と呼ばれる茎があります。
ピニャが蒸留所に納品されたあとに、このコゴージョと呼ばれる部分をカットする蒸留もあります。

コゴージョは苦味の成分が多く含まれており、そのまま残すと苦味がテキーラに付きます。
全て除いてクリアな味わいを作る、または風味としてすべてを残したり、半分だけ残したりと、蒸留所によって個性を出す部分になります。下のYoutubeで地面に転がっているのがコゴージョです。

コゴージョ
muchoagave.comより
出っ張っている部分がコゴージョ
コゴージョを除去
muchoagave.comより
除去済みのもの

珍しい一年で収穫できないアルコール原料(5〜7年が中心)

このアガベですが、一年では収穫できず、最低5年程度、平均6−7年ほど栽培してから収穫します。(2023年現在、アガベ高騰から生育年数が短く出荷されがちで、現在は5-6年もののアガベが中心です。)
他のアルコール原料である葡萄(ワイン、ブランデー)、麦(ビール、ウィスキー等)米(日本酒、焼酎)などは一年に一回は収穫できるものばかりです。お酒の原料としては、特筆して長い原料となります。

葡萄やリンゴといった果実は、植えてから数年は果実が収穫できないです。
またワインでは、古木を使った方がバランスの良い葡萄ができるなど、違った年数の楽しみ方がありますね。

ブランドの年数へのこだわり

このように時間がかかるアガベですが、年数を重ねるとサイズの大きさはもちろん、甘味と味わいが深くなります。蒸留所やブランド、銘柄によってこの生育年数にはこだわりを持っており、自社の生育年数を公表しているブランドもあります。
TEQUILA OCHO(8)やドン・フリオは、7−10年の範囲のアガヴェを使うとのことです。
 ※ドン・フリオは以前は10年とうたっていましたが、現在はアガベの高騰で非公表。

アガベのテロワール

アガベは他の農産物と同じで、気候や土地の特徴で味に変化があります。
一番わかりやすい違いはアガベの主要産地のハリスコ州の中でも、ロスアルトスとバジェスという二つの地方で、甘さや辛さが異なります。(詳しくはこちら

傾向としてはロスアルトス地方が土地が肥沃で、アガベも大きくなり、結果として皮が少なくできるので、辛さも少なくなる。バジェス地方の方がアガベが小さめで、スッキリとした甘さと辛さが強くなります。ただロスアルトスでも風味のバランスから、皮をあえて残すブランドもあります。

またアガベも畑の状態、地質によって味わいが異なるため、ロスアルトスのTEQUILA OCHO(オチョ・8)は特定の畑でのみ製造するといったこだわりを持っております。
OCHOは畑ごとにテキーラを製造しており、畑の名前と製造年数をボトルに記載しています。
さらにその畑の名前と所在地まで自社ウェブページで公開すると言ったこだわりようです。

引用:https://ochotequila.com/terroir/より

アガベのカットによる味の違い

テキーラの収穫する職人(ヒマドール)が葉をカットの仕方で、味わいも異なります。
アガベの皮には辛味と苦味の成分が含まれており、皮が多く残るようなカットすると辛味と苦味の成分が多く残ります。皮が残るからと言って、一概にだからダメということはなく、皮部分の残し方で個性にもなります。ロスアルトスのほうが皮を削るブランドが多い傾向にあります。

CASA REALのしっかり目カット
カスカウィンは皮を中程度に剥く

アガベの高騰

ここ数年のアメリカのテキーラブームにより、アガベの高騰が起きております。
前述の通り平均7年は栽培に時間がかかるため、需要が上がったからといって、すぐに増産できないのが難しいところです。
かといって、増産したあとにテキーラの需要が下がることもありえるのが、難しいですね。
マッサンブームで、熟成済みの国産原酒が不足したことで、高騰した国産ウィスキーみたいですね。

Tequila Matchmakerより

いかがでしたでしょうか、テキーラの原料としてのアガベは奥が深いですよね。
是非、テキーラを飲む際はどのようなアガベを使っているか思いを馳せて飲んでいただくと面白いと思います。

銘柄紹介

農園別のアガベを使うTequila OCHO ブランコ(畑と年数記載)

ロスアルトス産アガベを使ったテキーラ:ドン・ナチョ

バジェス地方:カスカウィン

もっとテキーラのことを知りたくなったら、以下のリンクをご覧になってください。

筆者渾身のテキーラ解説動画

筆者のおすすめテキーラ

おすすめ銘柄
「おすすめ銘柄」の記事一覧です。

テキーラの基礎知識

テキーラの一歩進んだ知識

著者情報

  • 著者名:テキーラダディ
  • 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
  • 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
  • テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。

Twitterはおすすめ銘柄などを発信

筆者のインスタでは蒸留所の美しい風景などをアップしています。ぜひフォローしてください!

コメント

タイトルとURLをコピーしました