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アガベ農家の本気Don Fulano(ドン フラノ)

★★★★+

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アガベ農家から、テキーラ蒸留所

今回はテキーラの原料であるアガベを作る農家から、テキーラを作り始めたDon Fulano(ドン フラノ)というブランドをご紹介します。ウィスキー等に比べ、原料生産者がお酒づくりをするという事例が比較的多いテキーラです。そのような原料であるアガベ農家が作るテキーラの中でも、特におすすめなのがドン・フラノです。その歴史をまずは紹介してまいります。

アガベ農家からスタート

ドン フラノはフォンセカ家という一族が作っております。
彼らはポルトガル系移民の初代は1880年くらいからハリスコ州アトトニルコ(ロスアルトス)アガベの栽培を始めたそうです。ここから長い間、このアガベはテキーラ蒸留所に卸していたのです。それから長い期間をかけてフォンセカ家は徐々にアガベ畑を広げていきます。

蒸留所を始める転機が訪れる

おおよそ100年間、一族はアガベを作り続けた中で、徐々に自らテキーラを作ろうと考えてきます。そのような中、1980年代中頃からアガベの値段の高騰が起きます。この時に一部の大手蒸留所からアガベの値段を抑えるように、圧力がかかります。このことにより、一族は蒸留所を持つことを決意したのです。

アガベ農家の彼らは一から蒸留所を建てるのではなく、すでにある蒸留所の買収に乗り出します。なかなか良い案件がなかったそうですが、最終的にテキーラ村にあるLa Tequileña distillery (NOM 1146) を買収することができました。

蒸留所の風景/引用:donfulano.comより

テキーラづくりの開始

蒸留所を手に入れたのは良いものの、4代目のエンリケ・フォンセカはアガベのことは知っていても、十分なテキーラづくりの知識がないことに気づかされます。今のままではダメだと、エンリケさんはテキーラづくりの知識を習得していきます。

彼の面白いところは、メキシコで学ぶのはもちろん、フランスではワインから発酵を学び、スコットランドでは蒸留器による味わいの違いを学びます。その後テキーラを作り始めて30年以上が経ち、5代目のセルジオもテキーラ作りに加わり、試行錯誤の結果、今のドン・フラノの形ができてきたのです。

セルジオ・メンドーサ(現蒸留所当主のエンリケ・フォンセカの甥でブレンダー)、引用:Agavefest.comより

ドンフラノというブランド名

ドン・フラノという名前ですが、由来を知っている方は少ないのでは無いでしょうか?フラノと聞くと、北海道の富良野市?と思うかもしれませんが、残念ながら違います。

ドンはメキシコの男性につける敬称(おじさん)です。有名な銘柄だとドン・フリオといった銘柄などがあり、フリオさん・フリオおじさんといったところでしょうか。
一方、fulanoは「誰か」「どこかの人」「ある人」と言った単語です。

ドンフラノは謎めいた存在、ミステリアスな存在、有名人でもなく、大衆でもなく、噂には聞くが実際にはほとんど知らない、無名の存在と勝負しているというニュアンスで、この名前にしたそうです。

ドンフラノの作り方

アガベ作りへのこだわり

前項で説明したとおり、元々アガベ農家のフォンセカ家は当然今もアガベ栽培をしており、ドンフラノに使用するアガベは100%自家栽培です。アガベは十分に熟したサイズの物を選定します。そして風味豊かなテキーラを作るために、カットする際は1.5-2インチ程度皮を残すのです。アガベの皮には辛味成分が含まれており、辛さが残るのですが、その分テキーラ独特の香りも生まれます。

また畑づくりへのこだわりとして、一度アガベを作ったあとは、2年ほどマメ科の植物を育てるそうです。マメ科の植物をそだてることで、土壌が回復し、窒素を取り戻すことで、また大きなアガベを育てることができるのです。このような取り組みは自家栽培だからこそできる贅沢な取り組みです。

引用:ドン・フラノの公式Facebookページより

加熱-搾汁-発酵-蒸留へのこだわり

アガベの加熱は低圧でのアウトクラベ

アガベはそのままでは発酵できないため、アガベを加熱して、多糖類から単糖類にする必要があります。そのやり方は主に2つのやり方があります。
一つはアウトクラベと呼ばれる圧力釜で高圧で短時間で加熱する方法、もう一つはマンポステラと呼ばれる煉瓦・石でできた釜で長時間かけて蒸し焼きにする方法。マンポステラのほうが香ばしいアガベの香りがテキーラに残るため、比較的高級なテキーラは多くがマンポステラで加熱します。
そのような中、ドンフラノはアウトクラベを使用しています。ただアウトクラベでも、高圧にしすぎずに低圧でゆっくりと加熱するのです。そうすることで、味わいはマンポステラのように香ばしい香りになり、また金属製の釜でやるため安定した味わいを実現することができるのです。

加熱されたアガベ/引用:ドンフラノ公式ページより

搾汁はスクリューミル

次に搾汁する際は、あまり使用されることが少ないスクリューミルという手法を使用しております。これは最も一般的なローラーミルと呼ばれる方法よりも評価が高くなっております。(参考:TasteTequila
あまり映像で見れないのですが、以下のDonFulanoのFacebook30秒目くらいにスクリューミルの映像見れるので、ぜひ見てみてください。

発酵はバガスも使用

発酵時に面白いのは、バガス(アガベの絞りカス)を使用して発酵させたものを約30%使用することです。バガスを使用することでアガベの繊維由来の香りが着き、香りの複雑性が増すと言われております。バガスを使用する場合、多くが搾汁時にタオナと呼ばれる巨大な石で搾汁するのですが、スクリューミルによる搾汁でも使用することができるようです。

蒸留では単式・連式の併用

スコットランドにも学びに行ったことで、蒸留に対しても大変こだわりが強いです。多くのテキーラマニアが好きなブランドは単式蒸留機で作られます。ドン・フラノでも80-85%は銅製の単式蒸留機を使用しております。

引用:ドン・フラノのFacebookページより

残りの15-20%は銅製のコフィー式連式蒸留機というものを使用しております。一般的に連式蒸留機は安い銘柄で使用されるイメージが強いです。ただ連式蒸留機の中でもコフィー式は構造的に香味成分が多く残る蒸留機になっております。

一般的には単式蒸留機は本格焼酎やモルトウィスキーに使用され高級、連式蒸留機は甲類焼酎やグレーンウィスキーに使用され低価格というイメージがスピリッツ愛好家の中では強いです。その背景としては、単式蒸留機はアルコールの抽出効率が悪い一方で香味成分も抽出物に多く含まれるため、香りの個性がしっかりと残るため良いというイメージです。

ただコフィーさん(Coffey)さんが考案したコフィー式は連式蒸留機の中でも大変古いタイプです。アルコールの抽出効率が比較的悪い上に、操作が難しいため使う蒸留所が少ないです。
ウィスキー業界では今でもニッカウィスキーでは使用され、コアなスピリッツファンからは愛されております。(ニッカではカフェ式と呼ぶ)

テキーラの加熱・搾汁・発酵のやり方についての説明

バーボン中古樽は熟成で使用しない

テキーラの大半の銘柄はバーボンの熟成に使用した中古樽やアメリカンホワイトオークの新樽を使用しております。どちらの樽もアメリカンホワイトオークを使用しており、香りの特徴としてはバニラやハチミツといった香りのエッセンスが溶け出します。

一方、ドンフラノのこだわりとしては、アメリカンホワイトオークの樽では香りによりテロワール(その土地由来の味・香り)が覆い隠されてしまうため、使用しないということです。ではなんの樽を使用するかというと、もともとヨーロッパでワイン熟成に使用されていた樽を主に使用するそうです。フレンチオークの中でもリムーザンやヌーヴェルといった高級な木材を使用したワインの中古樽、またスパニッシュオーク、東欧の木材を使用したワイン中古樽だそうです。そのことによりテキーラのテロワールを活かしながら熟成をできるようです。

ドン フラノの味わい、オススメ飲み方

ドン・フラノの歴史、作り方をここまで紹介してまいりましたが、ドン・フラノの味の特徴を紹介してまいります。

ブランコ

大変美味しいのは言うまでもないのですが、他のテキーラにはない味わいがあります。独特の旨味(バター)のような味わいがあります。

香り:バター、香ばしいアガベ、草、土、ハーブ、胡椒

味わい:濃厚な甘さ、薄っすらと辛さ・苦さ、ミネラル感、

アフターノート:香ばしいアガベとミント感
おすすめの飲み方:ストレート、カクテル
ソーダ割りやロックも良いですが、ぜひストレートで飲んでみてください。カクテルならトミーズマルガリータなどがオススめです。

おすすめ度:★★★★+

フエルテ

レポサド

アネホ

エクストラアネホ(インペリアル)

編集後記

いかがでしたでしょうか。ドンフラノは調べれば調べるほど独特な作り方をしており、飲んだときの独特な味わいはこの作り方から生まれるのだなと感じます。ぜひとも味わってみてください。テキーラの様々な情報を知りたい場合は以下のおすすめ記事を御覧ください。

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著者情報

  • 著者名:テキーラダディ
  • 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
  • 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
  • テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。

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