テキーラはメキシコの規格であるNOMによって製法が定められており、そのなかでラベルに記載する分類も定められております。
その中でも2つの大きな分類である、原料によるカテゴリー分けと熟成によるクラス分けについて解説してまいります。
テキーラの分類①:原料によるカテゴリー分け
100%アガベテキーラかミクストテキーラか?
テキーラの分類の1つ目は原料による違いです。
テキーラはアガベ・アスル(英名:ブルーアガベ)を51%以上使用しないとテキーラと名乗れません。
このアガベ・アスルを原料として100%使用した100%アガベテキーラ、逆に砂糖製造の副産物(糖蜜)等の安価な原料を49%以下で混ぜて発酵・蒸留した物がミクスト・テキーラと呼ばれる物になります。
メキシコの法令上、分類をすると「100%Agave Tequila」と「Tequila」の2種類で、「Tequila」がミクスト・テキーラと一般的に呼ばれる物に当たります。
100%アガベの表記は「100% de agave」, 「100% puro de agave」,「100% agave」 「100% puro agave」のどれかで表記されています。
日本でショットで主に飲まれているテキーラはミクストテキーラ
一般的に日本でショットでイッキ飲みされている主なテキーラはミクストになります。CRT(テキーラ規制委員会)の統計資料によると、テキーラの日本への輸出量のうち、約80%はミクストテキーラとなります。
2021年 | TEQUILA | TEQUILA 100% DE AGAVE |
日本向け輸出量 | 1,250,876 | 323,715 |
占有比 | 79.4% | 20.6% |
アガベは他の糖類に比べて高価なので、ミクストテキーラのほうが安価なケースが多いです。ライムと塩で流し込むことが多いので、味にこだわりを持たれないケースが多く、飲んでいる方の大半は100%アガベ・テキーラを知らない方のほうが多いのではないかと感じます。
代表的な銘柄としては、一度は見たことあるであろうクエルボのエスペシャル、サウザのシルバーやゴールド、オルメカ等が該当します。
テキーラは悪酔いする?実はミクストのイメージ?
テキーラが悪酔いするというイメージは、ショットで飲まされた経験がある人が一度は思うイメージかと思います。一方、テキーラ愛好家では悪酔いするのはミクストテキーラであって、100%アガベテキーラはそのようなことはないという意見が多いです。
科学的な証明はされていないそうですが、日本テキーラ協会の林会長も100%アガベテキーラは悪酔いしないと行った趣旨を発信されていらっしゃいます。
Q テキーラって悪酔いしない?
A 個人的な経験からですが、100%アガヴェのテキーラはもっとも悪酔いしないタイプのお酒だと思います。酔い心地も非常に良く、アルコールの抜けも早くすっきりしているように感じます。ぜひ体験してみてください。
私も同じ量を飲んでもミクスト(もしくはその他の蒸留酒)の方が100%アガベテキーラに比べて、圧倒的に悪酔いすると感じます。
特に夜時点で同じような酔っ払い方していても、翌朝の気持ち悪さや頭痛がミクストのほうがあると思います。当然、飲み方もショットで一気に飲むため、水を十分に補給できず早く酔うと行った影響はあると思います。
ただし、無理な飲み方をすれば100%アガベテキーラも悪酔いをしますし、ミクストでも品質の良いものもありますので、一概にミクストテキーラが悪いとも言い切れませんが、傾向としては100%アガベのほうが良い酔い心地になると考えております。
なぜミクストのほうが悪酔いしやすいのかというと、、、
(私が聞いたことがある説では)ミクストは49%未満を糖蜜という砂糖製造の副産物を使っていますが、質の悪いテキーラに混ぜられる糖蜜は古くなって酸化したものが使われているケースもあるそうです。その結果、蒸留されても不純物が多くて悪酔いの原因となるとも言われております。
100%アガベのテキーラ
一方、100%アガベで作っているテキーラは安い物は2,000円弱から高い物だと数十万円するものまであります。名前の通り、原料のブルーアガベを100%使用しており、アガベの香りや味わいを存分に楽しめる物が多いです。
この100%アガベをプレミアムテキーラと日本では呼ぶこともあります。そのため、このサイトのタイトルはプレミアムテキーラとしております。
身も蓋もありませんが、プレミアムテキーラはあくまでも通称のため、決して100%アガベのテキーラでなくても良いのです。
実際にプレミアムテキーラと自称しているテキーラでアガベを100%を使用していないケースもあります。ペルノリカールが輸入するオルメカがミクストテキーラです。
日本のオルメカサイトには「カクテルベースとして最適なプレミアムテキーラ。」と記載されております。ちなみにグローバルサイトには一切その表記はないため、テキーラに対する文化的な背景の違いかもしれません。
テキーラの種類②:熟成期間によるクラス分け
次の種類分けの方法としては、主に熟成期間によるクラス分けがあります。
以下に熟成期間別のクラス分けを記載しております。
クラス名 | 熟成期間 | 樽容量 |
ブランコ(Blanco)/プラタ(Plata)/シルバー(Silver) | 2ヶ月未満 | ー |
ホーベン(Joven)/オロ(Oro)/ゴールド(Gold) | ブランコにレポサド以上をブレンド、もしくはブランコに着色したもの | ー |
レポサド(Reposado)/エイジド(Aged) | 2ヶ月以上 | 特になし |
アネホ(Añejo)/エクストラ・エイジド(Extra Aged) | 1年以上 | 600リットル以下 |
エクストラアネホ(Extra Añejo)/ウルトラ・エイジド(Ultra Aged) | 3年以上 | 600リットル以下 |
熟成の期間で、樽の香りがついたり、アルコールの刺々しさが取れることで、リッチな味わいになります。
ただ熟成年数が長ければ良いか?というと、個人の好みが最後は大事だと思います。私は普段はレポサドを飲むことが一番多いですが、ブランドによって、ブランコのほうが良いということも多いです。
また熟成時の樽を新品の樽を使うこともあれば、バーボンやシェリーで使用した樽を使うことも蒸留所によってはあります。テキーラでは地理的にもアメリカは隣国となっておりますので、中古樽ではバーボンを使用されているケースが最も多いです。
樽の個性を活かすことで、ブランドごとの個性を出していきます。
上記表の中でもホーベン(Joven)/オロ(Oro)/ゴールド(Gold)の表記がある意味で最も複雑な物となっております。
日本向けの商品では、ゴールドは主に熟成していないミクスト・テキーラに着色されているものに使用されております。逆にホーベンは100%アガベのテキーラで、ブランコにレポサド以上のグレードを混ぜた物になっております。
同じクラスですが、内容は大きくことなるため、注意が必要です。
テキーラのその他種別
ここからは主にCRTが定めたテキーラの種類とは異なりますが、テキーラを区分・種別するものを紹介してまいります。
エリアによる違い(バジェス地方とロスアルトス地方、ハリスコ州以外)
詳しくはテキーラの産地は別の記事でご説明しますが、主要な産地のハリスコ州の中でも、バジェス地方(ローランド)とロスアルトス地方(ハイランド)があることを覚えてください。
バジェス地方は伝統的な蒸留所が多く、昔から有名なブランドが多いです。
主にクエルボやサウザが該当しますし、テキーラ好きでおなじみのブランドだとエラドゥーラ、カスカウィンなどが該当します。
ロスアルトス地方は比較的新しいブランドが多く、ドン・フリオやパトロン、オチョなんかが該当します。
ロスアルトスはハイランドとも呼ばれ、バジェスに比べて高地にあります。
高地で生育されたアガヴェは甘さが強くなると言われ、比較的初心者にも飲みやすいと思います。
またテキーラは主にハリスコ州で製造されておりますが、ハリスコ州以外にもグアナファト州、タマウリパス州、ミチョアカン州などのテキーラを飲むことができます。
製法による種別
他にもテキーラの味わいを決める種類としては、アガべの生育年数や加熱方法、圧搾などの方法で変わります。
銘柄ごとに作り方を知ることで、テキーラごとの味わいの背景をしれて、更に楽しめると思います。
銘柄の紹介の際は、作り方の特徴も紹介していきます。
作り方の紹介は以下のページが全体の流れや作り方の種別を理解するのに適しております。
ぜひ銘柄ごとの記事も読んでみてください。特におすすめのテキーラが載っているページも御覧ください。
編集後記
本記事では主にテキーラのカテゴリー(原料)とクラス(熟成)についてご説明いたしました。
以下におすすめの銘柄の紹介、本サイトのテキーラの理解が深まる記事をご紹介しております。
ぜひお読みいただき、テキーラを更に楽しんでいただければと思います。
カテゴリーとクラスの違いを楽しむ、おすすめ銘柄の紹介
【ミクストと100%アガベの違いを楽しむ】オレンダイン
ミクストとしても個人的におすすめしているオレンダインの中から、「オレンダイン」と「グランオレンダイン」をご紹介いたします。
【熟成の違いを楽しむ】エラドゥーラ
ブランコを45日熟成させている珍しいブランドのエラドゥーラ。
特にプラタ(ブランコ)がおすすめです!
【熟成の違いを楽しむ】カサ ノブレ ホーベン
数少ない日本で買えるホーベンがあるブランドのカサノブレ。
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著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
Twitterはおすすめ銘柄などを発信
筆者のインスタでは蒸留所の美しい風景などをアップしています。ぜひフォローしてください!
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