ウィスキー好きの方に是非知っていただきたい、面白いテキーラの魅力をご紹介していきます。
私自身が大のウィスキー好き
知り合いからも、テキーラばかりが好きと思われがちですが、昔から私はウィスキーが好きな方です。
国内はサントリーとニッカの蒸留所は全部回っていますし、アイラやスペイサイドの蒸留所にも訪れるくらいはウィスキーが好きです。
そんな私が現在、ウィスキーと同じかそれ以上によく飲んでいるテキーラを、同じウィスキー好きの皆さんにご紹介できればと思います。
ウィスキーとテキーラの違い、その魅力
ウィスキーとテキーラは当然ながらいろいろな点で違います。
その違いと意外とある共通点からテキーラの魅力を感じていただければと思います。
イメージの違い
多くの方にとって、テキーラと聞くとショットで飲む酔うための酒というイメージではないでしょうか。
実際、日本に輸入されるテキーラの大半はショットで飲んでいると推察されます。(輸入の約90%が後述のミクストのため)
多くの人はゆっくり楽しむお酒というイメージはないですよね。
一方ウィスキーは、15年ほど前まではオジサンのお酒というイメージが強かったですが、シングルモルト・ハイボール・マッサンブームから老若男女問わず人気かつプレミアムなお酒といったイメージになりました。
アメリカでのテキーラのイメージ
実はテキーラも原料のアガベを使用した100%アガベ・テキーラは、アメリカではプレミアムなお酒というイメージが強く持たれており、ゆっくり味わうお酒なのです。
ソーシャルネットワークという映画のラスト、成功した主人公はお祝いにシャンパーニュでもウィスキーでもなく、プレミアムテキーラのドン・フリオ1942を飲んでいます。
最近は電気自動車のテスラがテキーラブランドをローンチして、即完売したりとテキーラはアメリカのセレブには大変浸透したものになっています。
ジョージ・クルーニーは2013年に友人とCasamigosというブランドを作り、2017年に1,000億でディアジオに売却すると言ったニュースもありました。
下の写真自身のブランドのCasamigosと写っていますが、ダンディなおじさんとテキーラって組み合わせ、日本では絶対に見ないですよね。
アルコール度数のちがい
アルコール度数はテキーラの方が強く思われがちですが、実はほぼ変わりません。
ウィスキーはスコットランドの法令等から多くの銘柄が40度が多く、カスクストレングスだと60度前後まであります。日本では37度以上無いとウィスキーとは呼べません。
テキーラは原産地呼称に付随する法令で35-55度の物しかテキーラと呼称できない。また実際発売される物ではメキシコ向けが38度、米国向けが40度が多いです。
テキーラの方が強いと思われるのは後述のショットで飲まれることが多いからかもしれません。
ショットで飲まれるテキーラの正体
日本でショットで飲まれるテキーラの大半はミクストと呼ばれ、原料のアガベを51%〜しか使わず、糖分としては残りを糖蜜が使われます。
糖蜜はラムの原料にもなるので、一概に悪いとは言えませんがミクストに使われるものは、あまり品質が良くない事が多いという意見もあります。
結果として多くのミクストは味わいもイマイチなものが多いです。
そんなミクストを何度もショットで飲んでテキーラが嫌いになる方も多いかと思います。
(テキーラの定義を知りたい方はこちら)
日本酒で言うと純米酒と醸造酒の違いといえば味わいの違いは想像がつきますよね。
もしくはモルト好きにとっての、ブレンデッドとも言えますかね。
(ブレンデッドも私は好きですが、、、)
ウィスキーとテキーラの人気・プレミアム価格
ウィスキーとテキーラの消費量
ご存知の通り、日本での人気は著しくウィスキー人気の方が高いです。
ウィスキーの消費量は2018年で174,770kl、一方でテキーラは2019年に2,291klと約80倍!の開きがあります。
成人が約一億人いるので、テキーラは年間で一人当たり20ml、ウィスキーは1,740mlですね。
なので1年間でショット一杯しか飲まれないお酒とボトル2.5本くらい飲まれるお酒と考えると、すごいですね。
ちなみにアメリカでは日本の約100倍204,488klのテキーラが輸入されており、日本のウィスキー消費量よりも多いのです。
引用:テキーラジャーナル/国税庁資料より
テキーラはほぼプレミアム価格なし
ただ日本での人気がそこまで高くないので、どの銘柄も定価(もしくは定価以下)で買えます。
血眼になって探さなくても、正規輸入されている銘柄は大体買える状況です。
ウィスキーの探索に疲れたら、たまにはテキーラもいかがでしょうか?
原料の違い
ウィスキーはご存知の通りモルト(大麦)、グレーン(小麦やトウモロコシ)が原料です。
一方テキーラは100%アガベに関しては、アガベという植物の中でもアガベアスル(英語だとブルーアガベ)のみを使えるお酒です。
(アガベについてはこちら)
また法令上、違う蒸留所のお酒を混ぜれないので、全てが単一原料かつ同一蒸留所という意味では、シングルモルトウィスキーのようですね。
実際に蒸留所ごとの味わいは異なり、独特の個性があります。
テキーラはサボテンが原料と勘違いされがちですが生物学的に異なる植物です。
またアガベはお酒の中では珍しく一年で収穫できない植物です。
平均6-7年、長いと10年かけて初めて収穫されます。
大きく育つほど濃厚でクリーミーな甘さとなり、アガベの栽培年数は味わいを決める重要な要素となります。
蒸留所によってはアガベの生育年数を公表しているので、ぜひ確認しながら飲んでみてください。
産地の違い
ウィスキーは世界中で作られており、各地域で規制を設けて、スコッチやジャパニーズ、バーボンと名乗っています。
一方、テキーラは原産地呼称制度が導入されており、メキシコのハリスコ州とその近隣で作ったものしかテキーラとは名乗れません。
なのでジャパニーズテキーラは作れないのです。
(そもそも気候的にアガベアスルは日本で育たないと言われており、作ってもアガベスピリッツとしか呼べません)
また同じスコッチウィスキーでも、スペイサイドとアイラで大きく味わいが異なりますよね。
同様にテキーラもハリスコ州内でロスアルトスとバジェスという二大産地があり、味わいが結構異なります。
そのような味わいの違いを楽しむのはウィスキーでもテキーラでも共通の魅力です。
(詳しくはこちらを参照)
初めてテキーラをちゃんと飲まれる方は、ロスアルトスのほうが濃厚な甘さが特徴的でおすすめです。
樽熟成・エンジェルシェアの違い
テキーラもウィスキーと同じく樽で熟成しますが、大きく違うのが熟成年数です。
テキーラはブランコ(2ヶ月未満)→レポサド(2ヶ月以上)→アネホ(1年以上)→エクストラアネホ(3年以上)と、超長期熟成タイプでも3年でカテゴライズされます。
ウィスキーで3年といえば、一部のプライベートブランドぐらいでしか売っていませんし、スコッチの最低熟成期間です。
ただエクストラアネホとなるとテキーラでは最高級品で、しかも三年熟成させるとしっかりと樽感が強く感じます。
なぜそのような違いが生まれるかというと、テキーラとウィスキーの熟成スピードに違いがあります。
メキシコの暑さが樽熟成を進め、エンジェルシェアが多く発生します。
(ウィスキーで年間約2〜3%、テキーラでは年間約10〜15%)
また樽材には、樽香をしっかりと付けたいブランドは新樽を使います。どちらかというと樽香をつけすぎるとアガベの甘い香りを感じづらくなることから、お隣のアメリカで使用されたバーボン樽を再利用する蒸留所も多いです。(傾向として、マニア受けするブランドほど中古樽を使用する傾向にあります)
テキーラとウィスキーの違いまとめ
- アルコール度数はほぼ変わらない
- 日本での消費量はウィスキーが約100倍もある
- 原料はウィスキーが穀物、テキーラは多年生のアガベという植物
- 産地はウィスキーはどこでも法令上作れるが、テキーラはハリスコ州を含めたメキシコの5州のみ
- 熟成はテキーラの方が早く進み、エンジェルシェアも5倍程度早い
- ウィスキーはプレミアムがつくウィスキーも多いが、テキーラは定価で買える物が多い
- イメージはテキーラだと日本は悪いがアメリカだとプレミアムなスピリッツ
日本人が携わるテキーラブランド
まっさんが世界に飛び出して、ウィスキー作りで活躍したように、日本人が携わるテキーラ蒸留所は主に2つあります。
景田氏が働くカスカウィン蒸留所
テキーラが気になりすぎて、宛もなくメキシコに渡り、飛び込みでテキーラ蒸留所の門を叩いて雇ってもらったという、日本人初のテキレロ(テキーラ職人)景田氏です。
クレイジージャーニーというテレビ番組でも取り上げられているため、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、彼が働く蒸留所がカスカウィンです。
現代的なテキーラ業界において、伝統的な製法をあえて取ることも多い蒸留所で、テキーラ好きの中でもファンが多いブランドです。
サントリーの孫会社サウザ
サントリーが2014年にビーム社を買収したのはウィスキー業界では驚きで迎えられたと思います。
ビームの子会社にはメイカーズマークやラフロイグがウィスキー好きには認知されていると思いますが、実は子会社の一つに世界No.2のテキーラブランドであるサウザ社もあったのです。
サウザはミクストのシルバーが有名ですが、100%アガベテキーラも当然作っております。
日本に現在入ってきているのは、サウザブルーとサウザ・スリージェネレーションズという2ブランドです。
ブルーは千円台で買えるお手頃価格ながら、しっかりとアガベの甘味を感じられます。
ソーダ割りにしても味がぼやけないので、私はソーダ割りにすることが多いです。
スリージェネレーションズプラタは、スパイシーさとシトラス系の爽やかさが感じられる良いテキーラです。
ウィスキー好きにオススメ銘柄まとめ
ウィスキー好きに送るテキーラの魅力いかがでしたでしょうか?
今まで毛嫌いしていたけど飲んでみようかなと思ったら、ぜひ以下からお試しいただけると良いと思います。
ドン・フリオ・レポサド
濃厚な甘さが特徴のロスアルトス地方で作られたドン・フリオです。
アガベを7〜10年は熟成させると言われており、特にリッチでクリーミーな甘さが感じられます。
グランオレンダイン・アネホ
テキーラ御三家の一角とも言われるオレンダイン。歴史も古く、伝統的な製法をしっかりと守りつつ、大変美味しいテキーラを作ります。
オレンダインの中でも上級ラインのグランオレンダインはテキーラの中でも珍しい3回蒸留を行い、アネホにしては珍しい2年半も熟成させます。樽感が好きな方にはおすすめです。
パトロン・シルバー
パトロンもロスアルトス地方のテキーラで、アメリカで大人気のブランドです。
バカルディがブランドオーナーで、どちらかというとチャラいブランドイメージが強いのですが、作り方はしっかりと作り込まれております。
タオナと呼ばれる伝統的な石臼で原料のアガベを潰し、その潰した繊維を発酵に混ぜるとても手間のかかる製造方法をとっております。
※原液のうち半分をタオナで作成
昔ながらのタオナ
ハイボールにオススメのサウザ・ブルー
サントリーがオーナーになっているとお伝えしたサウザです。
こちらのブランドの中でもアガベ100%のサウザブルーはコスパもよく、スッキリした甘さがソーダ割りにぴったりです。
初めての100%アガベテキーラにおすすめです!
日本人が働くカスカウィン
カスカウィンには景田氏が働いてらっしゃいます。
そんなカスカウィンでもエントリーしやすいものだと、ブランコが良いと思います。
玄人が好む蒸留方法だと、パトロンの時にご説明したタオナという製法だけで作ったテキーラがカスカウィンの中でもテキーラ好きに大人気の銘柄です。
テキーラマッチメーカーと言うアメリカのサイトで有志の採点で100点中89点という高得点。パトロンシルバーで74点なので以下に高いかがわかりますかね。
テキーラのその他情報を知りたい方へ
いかがでしたでしょうか、テキーラはウィスキー好きこそ、楽しめるお酒だと思っております。
ぜひテキーラをいっぱい飲んでお酒の楽しめる幅を更に広げていただければと思います。
以下にテキーラのもう少し踏み込んだ知識が習得できるリンクを付けております。
ぜひ読んで、テキーラも更に楽しめるようになっていただけると幸いです。
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著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
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