ドン ナチョとはどんなブランド
日本のテキーラファンに最強コスパ銘柄として大人気のドンナチョ。また現地ハリスコ州に行った際は、地元アランダスの飲食店、酒屋には必ず置いてあり、地元の方にもたいへん愛されているブランドでした。
アガベ農家が作り始めたテキーラブランド
ドンナチョはテキーラの原料であるアガベの農家が始めたブランドになります。その歴史と農家が作る意義をご紹介してまいります。
ドンナチョがテキーラ作りを始めるまで
ドンナチョは創業者のイグナシオさんがアガベ農家として1982年にスタートしたそうです。当初は5,000トン程度の生産量だったそうですが、徐々に生産量を増やし、現在では80,000トンも生産しているそうです。

1993年に100%アガベという表記が確立され、アメリカでのプレミアムテキーラに対するニーズが更に高まりました。その需要の高まりから、原料のアガベは、その当時の最高値を2002年に更新します。アガベ農家としては2002年は大変利益が出た年だと推察されます。そしてドンナチョは翌年2003年にテキーラ作りを開始します。
自社の素晴らしいアガベをテキーラづくりに使用した結果、ドンナチョは大変人気の銘柄となりました。今ではテキーラ評価サイトで80点以上の銘柄しか存在しない、大変人気のブランドです。(2023年3月現在)
アガベ農家がテキーラを作るメリット
アガベ農家がテキーラを作るメリットは、いくつか存在すると筆者は考えます。
農家の立場からすると、アガベの価格が安い時期には自社で利用することで蒸留所に低価格で叩き売る必要がなくなる。努力して作ったアガベを、自分の思い通りのクオリティのテキーラに仕上げることができる。
また蒸留所オーナーとしては、アガベの高騰期に必要以上に高い値段でアガベを買わなくて良い。また値段だけでなく、アガベの高騰期には生育が十分なアガベを購入しようとしても、若めのアガベばかりが流通するそうです。2023年現在、まさにアガベの高騰期で、5−6年ものばかりが出回っており、7年以上のアガベが手に入りづらくなっています。そのような時期でも、自社農園があれば理想とするテキーラ作りに合致したアガベを使用することができるのです。

以上のことから、アガベ栽培、テキーラづくりが垂直統合した経営をすることは、大変安定したビジネスであり、メリットが大きいのです。ただし資金力がなければ当然実現できません。
ドン ナチョの由来
Nachoというのが当初なにか私はわかりませんでした。トルティーヤチップスにトマトとかかけた、テクス・メクス料理のナチョスの単数形かな?などと的はずれなことを思ったのですが、当然ですが違いました。
創業者の方のお名前がIgnacio Hernández Gutiérrez(イグナシオ・エルナンデス・グティエレス)で、イグナシオの愛称がNacho(ナチョ)ということです。
ドンは男性に使う敬称なので、”ナチョさん”や”ナチョ オジさん”といった意味合いのようです。

ドン ナチョの作り方
アガベづくり(全ライン共通)
アガベは全てのラインで同じ作り方・年数のものを使用しております。アガベ農家と記載しておりましたが、エリアはロスアルトスの農家さんとなります。同じハリスコ州でもロスアルトスエリアとバジェスエリアではアガベの味わいに違いがあり、傾向としてはロスアルトスのほうが濃密な甘さ(クリーミーとも)、バジェスのほうがストレートな甘さと言われております。当然その後の加工や発酵によって味は変わりますが、傾向としてはあることを覚えておいてください。
味わいが変わる理由としては、ロスアルトスのほうが海抜2,000m程度の高地にあり、また土が鉄分を含み赤色が強く、肥沃と言われております。一方のバジェスは海抜1,200mくらいで、近くにテキーラ火山があり、火山灰地質です。(以下写真は1枚目がロスアルトス、2枚目がバジェス)


十分に生育し、テキーラにとって最高な状態のアガベを収穫します。葉は以下の写真を見ると深めに落としています。削っています。
通常ライン
通常ラインの作り方は、ちゃんとした蒸留所のベーシックな作り方をされております。
収穫されたアガベは蒸留所に持ち込まれ、マンポステリア(レンガ製の釜)で加熱されます。搾汁の工程はローラーミル、発酵については蒸留所独自の酵母を使用してステンレススチールで作るようです。蒸留はステンレス単式蒸留器を使用して作ります。
レポサドの樽はアメリカンホワイトオークの樽を使用しています。
エクストラプレミアム
エクストラプレミアムは当初どこを見ても違いが載っておらず、インポーターさんにお伺いしたところ、大変贅沢な作り方をしていることがわかりました。
まずアガベの加熱時間が通常のラインよりも13時間長いです。アガベを甘くするためには、ゆっくりと熱を入れていくことで、甘くない多糖類(デンプン)から、甘さがわかりやすい単糖に変わり、甘くなります。また熱の入れ方によって甘さの質が変わります。レンジで短時間で加熱したサツマイモと、石焼でゆっくりと加熱した焼き芋の違いをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
次に発酵時間の長さが違います。発酵が長いとミルキーな甘さの発酵液になります。(現地のドンナチョではない蒸留所で発酵過程を飲ませてもらった印象)

最後は蒸留の過程です。蒸留ははじめに出てくるヘッド(頭)とテール(尻尾)部分のカット量がプレミアムでは多いです。ヘッドはエタノールではなく有害なメタノールが多いです。最後に出てくるテールは水(H2O)が多く、またその他の有害な物質なども増えます。このカット自体は多くのブランドで行うのですが、カットの仕方次第で味わいに変化が出ます。最終的に商品になる部分の一部を廃棄(場合によっては再利用)をするので、多くカットすればその分コストがかかってきます。エクストラプレミアムでは大胆にカットしていくのです。
ソモンケ
ソモンケはなんとミクスト(Mixto)と一般的に呼ばれるカテゴリのテキーラです。当サイトで主に取り上げているテキーラはアガベを100%使用しているのですが、ミクストとは糖分のうち51%以上アガベを使っているカテゴリです(一部例外あり)。有名な銘柄ですと、クエルボ・エスペシャルという銘柄(一気飲みなどで飲まれている銘柄)などがコレに当たります。
そのような中、アガベ農家がソモンケを作っているのです。これは結構筆者にとっては衝撃で、一部の例外を除き、ミクストは安価に作ることを目的としている印象で、あまりまともな銘柄とは言えないケースが多いのです。

たださすがはアガベ農家が作っているだけあり、ソモンケはミクストの中でもアガベを70%使用しています。
ゴールドに関しては、多くのミクストはカラメル色素を入れていますが、ソモンケは樽材に使われる木をタンクの中に入れて色や香りを抽出しております。
アガベ農家がこだわって作っている矜持を大変感じるブランドです。
また値段的にも1リットルで2,400円なので、750ml換算だと1,800円くらいとなります。値段的には他のミクストと遜色ない価格ながら、大変こだわっていて、かつ美味しいので日本で現在買えるミクストのなかでは最高のブランドの一つと言えるでしょう。
ドン ナチョをレビュー
ドンナチョの日本国内ラインナップ
日本ではGIAというアボカドなどもメキシコから輸入している会社がドン ナチョを輸入しております。世界で主に売られている銘柄は全て取り扱っているようです。2022年の円安以降も値段が変わっていないので、今後改定はあるかもしれません。(というか円が20%以上安くなっているのに、価格上げないのは心配になるくらいの状況)
銘柄名 | カテゴリー | クラス | 度数 | 値段 |
ドンナチョ ソモンケ シルバー | Tequila(ミクスト) | ブランコ | 35 | ¥2,400 |
ドンナチョ ソモンケ ゴールド | Tequila(ミクスト) | ゴールド | 35 | ¥2,400 |
ドンナチョ ブランコ | 100% Agave Tequila | ブランコ | 38 | ¥3,500 |
ドンナチョ レポサド | 100% Agave Tequila | レポサド | 38 | ¥3,700 |
ドンナチョ エクストラプレミアム ブランコ | 100% Agave Tequila | ブランコ | 38 | ¥6,700 |
ドンナチョ エクストラプレミアム レポサド | 100% Agave Tequila | レポサド | 38 | ¥7,000 |
ドンナチョ エクストラプレミアム アネホ | 100% Agave Tequila | アネホ | 38 | ¥7,500 |
ドン ナチョの国内全銘柄レビュー

ドン ナチョ ソモンケ シルバー
- レビュー
- 香り:アガベの甘さ、ペッパー、オレンジ
ほんわり香る心地よさ - 味わい:甘さ、辛さ
度数の問題もあると思うが、ちょっとスッキリしすぎかもしれない - アフターノート:甘さ、ペッパー
- 香り:アガベの甘さ、ペッパー、オレンジ
- おすすめの飲み方:○ストレート、○ソーダ割り
- おすすめ度:☆☆☆☆-
値段が大変安く、ベースは大変美味しいが、度数が低いため飲み方がストレートが望ましいが、ストレートで飲むには多少軽い印象。値段もお安いので、ソーダ割りでドバドバ使うのが一番良いかと思う!
ドン ナチョ ブランコ
- レビュー
- 香り:アガベの甘さ、草、ペッパー、(オレンジ)
始めは甘さや草、ペッパーなどがするが、時間を置くと徐々にオレンジの香りなど華やかな香りがしてきます - 味わい:濃厚な甘さ、辛さ、多少の苦さ
3千円台とは思えない甘さ - アフターノート:アガベとオレンジ
大変心地よい香り
- 香り:アガベの甘さ、草、ペッパー、(オレンジ)
- おすすめの飲み方:◎ストレート、◎ソーダ割り
3千円台の中ではストレートで飲むのに最高の一本。ソーダ割りも甘さが出て美味しい。 - おすすめ度:☆☆☆☆+
4千円以下で最高の一本。濃厚な甘さを感じられ、香りも素敵なドンナチョ。最高な一本。
ドン ナチョ エクストラプレミアム ブランコ
- レビュー
- 香り:アガベの甘さ、ブラックペッパー、グレープフルーツ、草、ミネラル、ハニー
グラスに入れた瞬間は草の青さやブラックペッパーなどが中心だが、徐々に甘い香りが強くなる - 味わい:濃厚な甘さとほどよい辛さ、薄っすら苦さ
甘さがしっかりと感じつつも引き際で辛さが出る。アルコール感は通常ラインよりも優しく感じる。 - アフターノート:アガベの甘さとペッパーとミネラル
- 香り:アガベの甘さ、ブラックペッパー、グレープフルーツ、草、ミネラル、ハニー
- おすすめの飲み方:◎ストレート、◎ソーダ割り、○ロック
ストレートやソーダ割りはもちろん、ロックでも甘さが感じられる - おすすめ度:☆☆☆☆
今回改めて飲んでみたが、通常ラインよりも香りの複雑性と洗練された味わいが魅力。アルコールの刺激も少ないと思う。

ドン ナチョ ソモンケ ゴールド
- レビュー
- 香り:アガベの甘さ、ペッパー、うっすらオーク感
- 味わい:スッキリした甘さ、多少辛いが他より落ちつている
- アフターノート:オークの甘さが感じられる
- おすすめの飲み方
○ソーダ割り、○ストレート - おすすめ度:☆☆☆☆-
シルバーと同じく値段を考えると大変良い銘柄。使い所が難しいがお値段もお手頃なので、ソーダ割りでドバドバ使うのがおすすめ!
ドン ナチョ レポサド
- レビュー
- 香り:バニラ、アガベの甘さ、ペッパー、時間置くとオレンジ
バニラがはっきりと出てきます。その後にアガベの甘さや時間を置くとオレンジの香りがしてきます。 - 味わい:濃厚な甘さ、うっすら辛さ
辛さはブランコより抑えられている感じがする。 - アフターノート:バニラ香とアガベの香りがしっかりと鼻に抜けます。
- 香り:バニラ、アガベの甘さ、ペッパー、時間置くとオレンジ
- おすすめの飲み方:◎ストレート、△〜○ソーダ割り
食中にはソーダ割りだとバニラ香が出すぎて、合わせづらい。ただ食後のお酒としてはスイーツに合わせたり、最高。 - おすすめ度:☆☆☆☆
バニラ香がこれでもかと香る。ただ使い所が難しいため、
ドン ナチョ エクストラプレミアム レポサド
- レビュー
- 香り:グレープフルーツ、バニラ、アガベの甘さ、ペッパー
通常ラインよりもグレープフルーツの香りがして素敵な香り。 - 味わい:濃厚な甘さ、うっすら辛さ
- アフターノート:アガベの甘さ、グレープフルーツ、バニラ
大変心地よい甘さが感じられる香りが鼻から抜けます。
- 香り:グレープフルーツ、バニラ、アガベの甘さ、ペッパー
- おすすめの飲み方:◎ストレート、○ロック
ロックでも腰が折れない甘さ。ストレートはもちろん最高。 - おすすめ度:☆☆☆☆
通常ラインよりは倍程度の値段だが、同価格帯のなかではおすすめできる一本。ストレートで樽とアガベのバランスが大変良い。熟成感が強いものの、アガベ感を感じられる。
ドン ナチョ エクストラプレミアム アネホ

- レビュー
- 香り:オーク感、バニラとアガベが全面で、グレープフルーツとペッパーは弱くなるが感じる
- 味わい:甘さ、辛さは落ち着く、樽由来の味が多少出る
- アフターノート:バニラとオーク感
- おすすめの飲み方:○ストレート、◎ロック
ストレートだとオーク感が強すぎて、多少加水されるロックのほうが良い印象。ロックだと香りが強いので香りが腰折れせず十分に感じられる。レモンを絞らずに入れると甘さが際立ってよい。 - おすすめ度:☆☆☆☆
大変美味しいが、ストレートだとちょっと筆者としてはオーク感が出すぎて、もう少しテキーラらしさがあると好きである。ウィスキー好きとかに初めて飲んでもらうテキーラとしては良いかもしれない。あと前述の通り、ロックで加水しながら、レモンを絞らずに入れると大変美味しく飲めました。
編集後記
いかがでしょうか。大変美味しいのに値段をお手頃価格にしていただいているドンナチョはいかがでしたでしょうか。大変個人的に美味しくおすすめできるブランドです。
飲んでみたくなった方は以下からぜひご購入ください。
【通常ライン】
【エクストラプレミアム】
【ソモンケ】
テキーラに興味を持った方へおすすめの記事
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テキーラの基礎知識
テキーラの一歩進んだ知識
著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
Twitterはおすすめ銘柄などを発信
筆者のインスタでは蒸留所の美しい風景などをアップしています。ぜひフォローしてください!
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テキーラの基礎知識
テキーラの一歩進んだ知識
著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
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