この記事をご覧になられている方であれば、ホセ・クエルボ・エスペシャル(Jose Cuervo Especial)というテキーラをご存知かと思います。世界で最も売れているこのテキーラとして、同時に「最低レベルの評価を受けているテキーラ」という不名誉なレッテルを貼られているのも事実です。
今回は、世界で13人目のITA認証Tequila Sommlierである私が、この人気者でありながら酷評も受けるホセ・クエルボ・エスペシャルを徹底的にレビューします。忖度なしの正直な評価と、その歴史を詳らかにしてまいります。
世界一売れているのに「最悪」?それは過去の記憶のせい?
Tequila Match Maker (TMM) というテキーラ愛好家が集うレビューサイトをご存知でしょうか? ユーザ投稿型のこのサイトで、ホセ・クエルボ・エスペシャルはこのTMMで非常に低い評価を受けています。ランキング順にすると、レポサドカテゴリーやゴールド(Joven)カテゴリーで評価数の少ないものを除くと、ほとんど最下位と言っても過言ではありません。(100点満点で20〜30という低スコア)
ちなみに点数が2つ並んでいますが、左側がパネリストと呼ばれる一定数の評価をつけて、TMM創業者にパネリストになりたいと申請した人がつけているスコアの平均です。そのためよくテキーラを飲んでいる人ほど低い評価をつけているのです。
引用:TequilaMatchMakerより
ちなみにTMMの評価システムは以下表の通りで、30点台とは”Undrinkable”(飲めたものじゃない)を連発し、”Ripoff”(ぼったくり)呼ばわりしないとなかなか出ないすこあであるということです。
Aroma | Flavor | Finish | |
Amazing | 24-25 | 29-30 | 24-25 |
Excellent | 22-23 | 27-28 | 22-23 |
Good | 20-21 | 24-26 | 20-21 |
Fair | 18-19 | 21-23 | 18-19 |
Poor | 16-17 | 18-20 | 16-17 |
Undinkable | 0-15 | 0-17 | 0-15 |
DrinkAgain | Recommend | |
Yes | 5 | 5 |
Maybe | 2 | – |
No | 0 | 0 |
Value | |
Bargain | 9-10 |
Excellent | 7-8 |
Average | 5-6 |
Overpriced | 3-4 |
Rip off! | 1-2 |
そこまで低い評価がつけられる理由はいくつか考えられますが、私が考えた仮説は「ミクストだから」「クセのある味わい」「イメージ」の3点です。
ミクスト(MIXTO)だから評価が低い?
仮説の一つとして挙げられるのが、「ミクスト」と呼ばれる製法です。テキーラの主原料はブルーアガベと呼ばれる植物を原料にしますが、このアガベを100%使用する100%Agaveテキーラと、51%以上をアガベを使用して他の原料として糖蜜と呼ばれる砂糖の副産物を使用するミクスト(正式名称:Tequila)の2種類があります。詳しくは以下の記事をご覧いただきたいです。
ただ他のミクストでもSauza以外はそこそこの点数で、例えばメキシコで最も売れているブランコのミクストであるOrendainは60点台を出しています。そのためミクストだから点数が低いとは言えないのではないかと思います。
クセのある味わいだから評価が低い?
次にクエルボの特にゴールドは独特なクセがあり、後述しますが若干皮っぽいニュアンスを感じます。これがクエルボの評価を下げている可能性はありますが、ものすごく強いわけではないので、これだけで評価を他のミクストや100%アガベに比べて良いところとも言えるし、そこまでの押し下げ効果はないのではないかと思われます。
みんな、嫌なイメージが強いから評価が低い?
同様に評価が低い有名テキーラとしてはSauzaが挙げられます。この2つに共通する点は、昔からショットドリンクとして飲まれてきた、現在のアメリカのテキーラの飲まれ方とは違う方向性の利用され方をしてきたことではないでしょうか。
つまり、みんながこの2つのテキーラで”嫌なイメージ”(二日酔いになったり、嘔吐したりした)を持っている点が共通点として挙げれるのではないか。しかし、私はこの評価は少しばかり不公平、というよりも、過去のイメージに引きずられていると感じています。
確かに100%アガベテキーラと比べると複雑さや深みには欠けるかもしれませんが、ホセ・クエルボ・エスペシャルは決して30点前後の評価と断じるほどひどいテキーラではありません。多くの人がクエルボに対して抱くネガティブなイメージは、ショットドリンクとして若者が一気飲みする際に飲まれ、その独特なクセが不快な記憶として残っているからではないでしょうか。
TMMは自由に投稿できるサイトなので、どんな点数をつけるのも自由ですが、正直イメージに引っ張られて点数をつけるのは、ナンセンスだと思います。ましてやパネリストと呼ばれる点数をつけるプロフェッショナルを自称し、TMM創業者にパネリストになりたいとまで申請した人間が、イメージに引っ張られて評価をつけているのであれば、いかがなものかと思います。
ホセ・クエルボ・エスペシャルをテイスティング!
それでは、実際にホセ・クエルボ・エスペシャルのレポサドをテイスティングしてみましょう。
まず香りは、樽感があり、少しはアガベの香りもあり、ほのかに青りんごっぽさも感じられます。ただ人工的な香付けな感じもします。ただ”Undrinkable”の飲めたようなもんじゃないという表現にはなりません。
口に含むと、テキーラ的な甘さよりも人工的な甘さが前に出ます。そのためあまり評価は高くないギリギリUndrinkableで”Poor”寄りの評価。
最後に鼻から抜ける香りは甘さもありつつ、皮っぽさを感じます。これはクエルボの酵母由来のもので、
これは好き嫌いが分かれるところです。ですが、私はこの独特な風味がクエルボの魅力の一つだと考えています。このクセがあるからこそ、クエルボらしい存在感を放っているのです。
最終的に私のクエルボの評価をTMMでつけると55点になりました。やはり30点前後にはなりません。。。
クエルボの歴史と「ミクスト」テキーラ
ホセ・クエルボは、1795年に創業した歴史あるテキーラブランドです。同じ蒸留所で作っている1800のなかで細かく記載しております。ぜひ興味のある方はご覧になってみてください。
まとめ:ホセ・クエルボ・エスペシャルを見直そう!
結論として、ホセ・クエルボ・エスペシャルは、過去のイメージや一部の偏った評価によって不当に貶められているテキーラです。確かに美味しいテキーラのような複雑さや深みには欠けるかもしれませんが、独特なクセが魅力の、親しみやすいテキーラです。
テキーラを飲み慣れている方であれば、固定観念を捨て、ぜひ一度、ご自身の舌でホセ・クエルボ・エスペシャルを味わってみてください。きっと、その面白みを再発見できるはずです。
編集後記
改めてクエルボを飲んでみると面白いです。テキーラ自体が面白いと思ったら、ぜひ以下の私のサイトのおすすめコンテンツをご覧ください。
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著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
Twitterはおすすめ銘柄などを発信
筆者のインスタでは蒸留所の美しい風景などをアップしています。ぜひフォローしてください!
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