Casa Realとの出会い
基本的に当メディアは日本に入ってきている銘柄だけを取り上げておりますが、今回取り上げるCasa Realは数少ない日本では取り扱っていない銘柄です。まずはなぜこのサイトで日本に入ってきていないCasa Realを取り上げるのかご説明してまいります。
LALOというブランド
Casa RealはGrupo Tequilero Mexico, S.A. de C.V.という蒸留所の自社製造ブランドです。この蒸留所が作っているブランドでは、自社製造ブランドではないものも多く、その中でもLALOという委託製造ブランドが現在アメリカで急成長中です。LALOの説明は以下の別の記事をご覧いただければと思いますが、ドンフリオという超有名ブランドの三代目が、自分で作り上げたブランドです。
LALOの美味しさにハマった筆者は2023年1月にメキシコに行く際、作っている蒸留所へ絶対行こうと決めました。メキシコに行くに当たり、事前に通訳をお願いしていたアミさんにこの蒸留所のアポをお願いしておりました。
日本人未踏の蒸留所
この蒸留所のアメリカでマニアに有名なブランドだとLALO以外にもAlquimia、PM Spiritsなどがあります。ただ日本で販売されているブランドは一個も無いのが現状です。またアメリカでも人気があるとはいえ、マニア向けの人気のため、現地でのツアーなどに組み込まれていることもありません。
このような観光客向けの蒸留所でない場合、蒸留所の方々も仕事の合間で対応することになる、日本人を受け入れても売上に繋がらないため、なかなかアポ取りは一筋縄ではいきませんでした。そのような中でも通訳のアミさんが粘り強く交渉いただき、訪問が実現しました。おそらく日本人で初の訪問者となったようです。(メキシコでテキーラ蒸留所に行くための方法は以下を参照ください)
設備が最新の蒸留所
Grupo Tequilero Mexico, S.A. de C.V.は家族経営で蒸留所を運営しております。場所はロスアルトス エリアのアランダスという街にあります。1997年からアランダスでスタートし、操業してきておりましたが、実は2022年に同じアランダス市内の郊外に移転をしております。そのため最新の設備を持つ蒸留所となっております。
職人に優しい設備
マンポステリアと呼ばれるレンガ製の釜にピニャ(アガベの葉を落とした状態)を入れるのは大変な労力のかかる作業です。葉を落としたとはいえ、一個あたり20kg以上で重いものは40kgを超えるものもたくさんあります。それを以下の写真のように天井までマンポステリアに積む必要があります。(マンポステリアの入り口で190cmくらい)
この積む作業を簡単にしたのが以下のマンポステリアです。ベルトコンベアにピニャを乗せると、ベルトコンベアでマンポステリアに運びます。このピニャを上からマンポステリアの中に落としていくのです。職人は落ちてきたピニャをきれいに置き直すだけで良いので、手作業のみで積んでいくよりも楽にできるのです。
タオナ×2
現在、テキーラマニアにはタオナと呼ばれる石臼で加熱後のピニャを搾汁することが人気です。大変手間のかかる作業で、数年前までは5箇所程度の蒸留所しか導入していませんでしたが、現在は徐々に増えてきております。そのような中、新蒸留所設営に併せて2機も設置されたのです。
また面白いのが2つのタオナの削り方が異なっており、一つは機械で溝を彫り、もう一つは人力(!?)で彫っているそうです。ちなみに今回ご紹介するCasa Realという銘柄ではタオナは利用しておらず、今後製造を始める銘柄で利用予定だそうです。
銅製蒸留機の導入
以前はステンレス製の蒸留機だったそうですが、今回の移転により銅製蒸留機に置き換えております。銅製の蒸留機は硫黄化合物を吸着するということで、テキーラ好きにはたいへん好まれる蒸留機です。ただ吸着した硫黄化合物のメンテナンスが大変ということで、他の蒸留所では、一部の蒸留機を銅製としたり、ステンレス製の中の加熱するためのコイルだけ銅製というところは多いですが、全て銅製ということろは比較的少なめです。全て銅製としているのは日本でも有名な蒸留所だと、G4のエル・パンディジョやFortalezaのロス・アブエロスといった蒸留所になります。
アメリカのテキーラ愛好家のLou Agave of Long Islandによると、蒸留所が移設されたタイミングでLALOも蒸留器が銅製のものに置き換わっており、旧ロットと新ロットで明らかに味わいが良くなっているそうです。
Casa Realの作り方
アガベ
アガベは全てロスアルトス地方の自社農園で栽培しているそうです。そのため現在のアガベ高騰機であっても贅沢にアガベを使用できるそうです。またアガベのカットは皮を薄めにカットしていました。
アガベの皮が薄いほうが手放しに全て良いかと言うと、皮由来のからみも含めて良い銘柄もあるので一概には言えません。ただし皮が少ないことで辛さが抑えられて、甘さが際立つとは言えるので、ロスアルトスの濃厚な甘さのテキーラを存分に感じられると思います。
加熱〜蒸留
加熱は前述の通りマンポステリアで加熱します。搾汁するローラーミルも大変新しく、衛生的な環境で作られていました。
発酵に関してはシャンパーニュ酵母を使用しています。ただ発酵促進剤などは使用していないため、3−4日ほど発酵に時間をかけるそうです。発酵促進剤を使うと24時間程度で発酵は終わりますが、そのようにすると味が落ちるということで、Casa Realは使用しないのです。
蒸留に関しては前述の通り銅製の蒸留機で二回蒸留をします。出来上がったテキーラを加水して出来上がりです。
樽熟成
樽はフレンチオークで熟成します。レポサドは11ヶ月、アネホは35ヶ月とそれぞれの熟成期間の限界まで熟成しております。
無添加(Additive-Free)
Casa Realは規定に認められた添加物も入れていない無添加のテキーラとなります。そのため、アガベ・酵母・水・職人の技をフルに感じることができるブランドです。
CasaRealの味わい・おすすめの飲み方
ラインナップ
Casa Realはブランコ・レポサド・アネホの三種類がラインナップされております。
銘柄名 | 分類 | 熟成 | 度数 | 値段 | 備考 |
Casa Real ブランコ | 100% Agave Tequila | ブランコ | 40 | 日本未発売 | 無添加 |
Casa Real レポサド | 100% Agave Tequila | レポサド(11ヶ月以上) | 40 | 日本未発売 | 無添加 |
Casa Real アネホ | 100% Agave Tequila | アネホ(35ヶ月以上) | 40 | 日本未発売 | 無添加 |
味わい・おすすめの飲み方
ブランコ
- レビュー
- 香り:甘草、アガベの甘さ、ペッパー、緑色のハーブ(ローレルとか)
しっかりと濃厚な香りが漂います - 味わい:甘さがしっかりと前面に出て、心地よい苦味があります。辛さは控えめ。
甘さもさることながら、粘度が高くいわゆるオイリーな感じ - アフターノート:オリーブとアガベの甘さを感じられる
- 香り:甘草、アガベの甘さ、ペッパー、緑色のハーブ(ローレルとか)
- おすすめの飲み方:☆ソーダ割り、☆ストレート、○ロック
- Tequila Daddy’s Point:☆☆☆☆++
濃厚なロスアルトスらしい甘さに、香りの多様さがあり、大変素晴らしいテキーラ!飲み方もストレートが美味しいのはもちろんだが、ソーダ割りが想像以上に美味しい。個人的には今まで飲んだ中で最も美味しいソーダ割りだと思う。(アメリカの以前販売されていた価格をもとに評価)
レポサド・アネホ
後々アネホが手に入り次第レビューします。
(余談)筆者が嬉しかった話
私がGrupo Tequilero Mexicoに訪問したのは2023年1月下旬でした。正直、そこまで自社ブランドのCasa Realには期待していなかったのですが、Casa Realのブランコを飲んで、その美味しさに衝撃を受けました。ただそのときはTequila Match Makerというテキーラ口コミサイトでは、レビュー数も少なく、そこまで高い評価をされていなかったのです。
日本に帰国後、何人かのテキーラマニアに飲んでもらい、大変好評を得ていました。
ただ正直、自分の思い入れなどもあるだろうし、どこまで正確な評価ができているか自信がなかったのですが、一ヶ月程度した際にTequilaMatchMakerの創設者の二人(グローバーさんとスカーレットさん)がそれぞれ89点と87点という大変高いスコアをつけていたのです。自分が美味しいと思ったものを、世界のテキーラ愛好家が評価をしてくれたことが個人的には大変嬉しく感じました。日本で発売されているブランコでおそらく同価格帯と思われるテキーラだと、パネリスト評価でトップタイのレベルとなる評価です。
(目安として、80点で高い評価、85点ですごい高い評価、90点以上は数えるほどしかない&1万円以上のブランドでないと存在しないレベルの評価)
Grupo Tequilero Mexicoの社会貢献
前述の通り職人さんに優しい設備づくりをしていると書きましたが、職人だけでなく、社会に対する貢献も意識した運営を行っており、”EMPRESA SOCIALMENTE RESPONSABLE”(社会的貢献企業)に四年連続で受賞しています。またオーナーのIrmaさんは地域の社会貢献のために教育プログラムの提供などを行っております。
編集後記
個人的には23年1月のメキシコ旅で一番衝撃を受けた出会いでした。ぜひいつか日本に輸入される(自分でできると?)と良いなと思っております。輸入された際は是非購入してください。
本記事でテキーラ自体に興味を持たれた方は、以下をご覧になってください。
筆者渾身のテキーラ解説動画
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テキーラの基礎知識
テキーラの一歩進んだ知識
著者情報
- 著者名:テキーラダディ
- 本業:非アルコールの食品系業界のマーケティング部門
- 資格:日本テキーラ協会認定テキーラマエストロ(100期代)
- テキーラ関連の経歴:2009年に北海道にあるバーで本格的なテキーラに出会い目覚める。2023年にはハリスコ州内の蒸留所見学を果たす。テキーラ以外にもスコットランドのアイラ島など各地の蒸留所、国内のウィスキー蒸留所、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュ、国内の酒蔵、ブリュワリー、ワイナリーなど全世界のアルコール製造現場を巡る。
Twitterはおすすめ銘柄などを発信
筆者のインスタでは蒸留所の美しい風景などをアップしています。ぜひフォローしてください!
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